に、まずは驚愕が浮

に、まずは驚愕が浮かび、それがあっという間におどおどしたになった。

 

「ぽちは、ぽちはにうつすような病にかかっているのか?」

「はい?」

 

 俊春は、こんなときまで想像の斜め上をいきまくっている。またしても、理解不能な問いを投げつけられてしまった。

 

「しらなかった。気がつかなかった。Company Deregistraion ぽちは、みなに病をうつしてしまったかもしれぬのだな?」

「はああああ?ちょっ、なにをいってるんです、ぽち?なにもあなたが病なんていってませんよ」

「おぬし、やはりぽちをいじめているのであろう。はっきりと申したではないか。狂犬病だと」

「ちょっ……

 

 たしかにいった。そこまできて、やっとこのおかしなコントのネタに気がついてしまった。

 

「狂い犬」……

 

 たしかに狂犬だ。

 

「ぽち、それは誤解です。あなたではない。相棒です。狂犬病、ああ、いい方が悪いですね。「病い犬」とか?「狂い犬」ともいいましたっけ?ああ、だめじゃないか。「狂い犬」なんて、そのまんまだ。兎に角、ぽちのことではありません。相棒のことなんです」

 

 キレそうになってしまった。

 

「なんてかわいそうなことを。いくらなんでも、兼定が狂った犬にみえるか?」

「主計、勘吾さんの申すとおりだ。申し訳ないが、わたしのには狂っているのはおぬしのようにみえるのだが」

「たしかにな。主計。兼定をぽちにとられてからというもの、やっかんでぽちをいじめたり、兼定に理不尽なことを申したり、として最悪なことばかりしておるではないか」

「はあああああ?」

 

 蟻通につづいて斎藤、さらには副長まで。副長にいたっては、そんなこと思ってたんだって、びっくりというよりかはなんか悲しくなってきた。

 

「そんなんじゃありません」

 

 きっぱりと否定してみたが、みんなのじとーっとしたには、完璧に彼女あるいは妻をほかの男性にとられた気の毒すぎる彼氏、あるいは夫をみるような侮蔑的なものがこもっている。

 

 ダメだ。どれだけ否定しようが断言しようが、よけいに事態や立場を悪くするだけだ。

 

「降参します。おれが悪うございました」

 

 だから、そうそうにあきらめた。両掌をあげ、降参のポーズをとる。

 

「ですが、これはマジな話なんです。犬とか猫とか鼠とか、病をもっている動物にかまれたりなめられると、にもうつるんです。そうなると、たいてい死んでしまいます。相棒に兆候はまったくありませんが、万が一ということがあります」

 

 とはいえ、大切なことは理解してもらいたい。必死さが伝わったのであろう。副長をはじめ、最後までだまってきいてくれた。

 

「主計、案ずるな。大丈夫だ」

 

 俊春が立ち上がり、こちらにちかづいてきて掌をさしだしてきた。

 

「大丈夫?」

 

 その掌を握り、上下にぶんぶん振りながら問う。

 

「ぽちは、大丈夫」

「いや、だからあなたではありませんってば」

「兼定も大丈夫。病にはかかっておらぬし、かかることはない」

 

 俊春は、ささやき声でそういいきった。

 

 はい?なにを根拠に断言するのか?かれは、おれの説明を理解していないのか?

 

「わたしのときとはちがい、想定しうる病にたいする備えはできている」

「はああああ?おっしゃる意味がよくわかりません」

 

 またしても、グーグルさんのように応じてしまった。

 

「それに、掌を握るのはやめてくれぬか。得物をかえしてほしいだけだ」

「あ、すみません」

 

 さしだされた掌が握手の意味ではなかったことはわかった。

 が、『病にたいする備え』の意味は、まったくわからない。

 

 が、かれはおれの掌から自分の「村正」をとりあげると、さっさとはなれてしまった。 俊春はおれからはなれると、ちかくにある栃ノ木にちかづきそれをみあげた。

 かれの「お父さん犬」も、かれと同様木の上をみあげている。

 

 相棒の尻尾は、これでもかというほど上下左右に振られている。それは、相棒がめっちゃ興奮していることをあらわしている。

 

「がらにもなく、はずかしがることはありますまい。それに、もったいぶりすぎです。ったくもう、すぐに恰好をつけたがるのですから」

 

 俊春が栃ノ木に文句をいいはじめた。

 

 刹那、背後になにかを感じて……

 

「あいかわらず、主計はいじられ上手であるな。そのうえ、みなから愛されすぎている。心から安堵いたした」

「ひいいいいいいいいいいいいいいいっ!」

 

 耳にささやかれたものだから、悲鳴をあげてしまった。もちろん、飛び上がるというアクションまでそえたのはいうまでもない。

 

 し、心臓がとまるかと思った。いやいや。実際、一瞬止まった気がする。

 

 おれの悲鳴に驚き、「豊玉」も「宗匠」も大鳥の馬も驚き、いなないている。もちろん、も、何人かは「ひいっ!」とか「うわっ!」とか叫んだようである。が、だれの叫び声だったかはわからない。

 

 ってか、おれの叫び声のほうがすごすぎて、よくきこえなかった。

 

 驚きすぎてなかなか立ち直れず、前傾姿勢で荒い息をついてしまっている。

 

 いったい、いまの叫び声は何デシベルになっただろう。自分でも声が裏返っていたのがわかった。かなりの高音域にたっしたであろう。ソプラノのオペラ歌手っぽくなっていたかもしれない。

 

 またしても、副長に「いいかげんにしやがれっ!」って雷を落とされる。

 

 なにゆえ悲鳴をあげてしまったのかなんてことは、すっかりふっ飛んでしまっている。

 そんなことより、いまから落ちる雷にしか意識が向いていない。

 

 よくよくかんがえてみれば、おれってばどれだけ副長のパワハラ、もとい副長のご機嫌を損ねることを怖れているんだ?そんなことをかんがえると、つくづく悲しくなってしまう。

 

 が、いつまで経っても、副長の雷が落ちてこない。しかも、いまは馬たちすら騒いでおらず、周囲は宇宙空間に放りだされたかのように無音である。

 

 やっとこさ、心臓も気分も落ち着いてきた。そこでおそるおそる姿勢を正し、周囲をみてみることにした。

 

 全員、おれをみつめている。その